母性のない我が家の母の話

小学校から帰ってきた妹がいきなり泣いて怒っている。聞けば母親が給食費を払い忘れ、学校で他の生徒の前で先生に注意されてしまったらしい。またか。俺が小学校の頃も何度もやられた。周りの級友たちから家が貧乏なのかと心配されたものだった。学校側もひとが悪い。母性のない我が家の母のことを知っているはずだ。兄の俺の時だってそうだったのだ。単なる払い忘れというだけで、給食費を踏み倒す気なんてないことは、わかっているはずだ。それをこれ見よがしに他の生徒の前で言うなんて、妹が泣いてしまったのもわかる。そしてそんな仕打ちを我が子が受けたからと言って、母は特に反省することも妹を可哀相だと思うこともないだろう。もとからそんな人だ。

どのような環境で育ったからそうなったのかはわからない。俺が物心ついたころには祖父や祖母はいなかったから。とにかく母は無表情で無感動。家事はそれなりにこなすが、子どもに愛情を注ぐという人ではなかった。父とはお見合いで知り合い、父が母の容姿を気に入って猛アタックの末ゴールインした。父は人並みに人を愛せる人で、もちろん俺たち子どもにも多くの愛情を注いでくれた。しかし母は、特に俺たちを可愛いという目で見てくれたことはなかったと思う。結婚したから子どもを作って産んだ。知っているだけの育児はする。そんな感じだ。

妹を泣かせた母本人は、今日もどこかにお出かけ中だ。好きな歌舞伎かウィンドウショッピングか。夕方に帰ってきて適当に料理を作って、父が帰ってきたら父の世話もそれなりに焼く。しかし俺や妹が父とリビングで話していても、母は絶対に参加してこないし俺たちの姿を見ようともしないだろう。